タカサキきんこんかん

タカサキのキンコンカンの日々

ふろふきの食べ方。

 長田弘さんの詩集『食卓一期一会』に入っている「ふろふきの食べ方」という詩が好きで、この詩を朗読するワークショップを、昔あちこちでやりました。

 一番最初にやったのは町田養護学校の教員向けのワークショップ。教員達にもっと自由になって欲しいと思い、詩の朗読ワークショップを企画しました。今ぷかぷかのアートディレクターをやっている金子さんとは、この時のワークショップで知り合いました。

 詩を朗読する、というたったそれだけのワークショップですが、なんかふっと自由になれて、ふっといつもと違う世界が見える瞬間がワークショップにはあります。そのことを教員達と共有できたように思います。その経験を元に、あちこちで詩の朗読をするワークショップをやるようになりました。四国で行われた全国ボランティア研究集会でやったときは、ものすごい盛り上がりで、ステージで発表会をするほどでした。

 詩を朗読する、というたったそれだけのことが、人の背中を押し、人を大きく前に押し進めるのです。

 

 言葉を声に出して読む。声を出して、言葉にふれる。声を出すと、言葉の感触が、いつもとちがう。

 詩を、誰かに向かって読む。誰かに向かって読むことは、誰かに向かって自分の思いを届けること。そのとき、言葉がむくむくと生きはじめる。

 言葉が生きはじめる瞬間を、抱きしめるようにからだに記憶しよう。

 立って読む。座って読む。歩きながら読む。何かにもたれかかって読む。寝っ転がって読む。

 あなたは、誰に向かって読む?

 

 

 ふろふきの食べ方

                          長田弘

 自分の手で、自分の

 一日をつかむ。

 新鮮な一日をつかむんだ。

 スが入っていない一日だ。

 手に持ってゆったりと重い

 いい大根のような一日がいい。

 

 それから、確かな包丁で

 一日をざっくりと厚く切るんだ。

 日の皮はくるりと剥いて

 面取りをして、そして一日の

 見えない部分に隠し刃をする。

 火通りをよくしてやるんだ。

 

 そうして深い鍋に放りこむ。

 底に夢をしいておいて、

 冷たい水をかぶるくらい差して、

 弱火でコトコト煮込んでゆく。

 自分の一日をやわらかに

 静かに熱く煮込んでゆくんだ。

 

 こころ寒い時代だからなあ。

 自分の手で、自分の

 一日をふろふきにして

 熱く香ばしくして食べたいんだ。

 熱い器でゆず味噌で

 ふうふういって。

 

 

 

手に持ってゆったりと重い大根を買ったので、今日はふろふきにしようかなと思っています。自分の一日も一緒に。

 

機会があればこの詩をみんなで読むようなワークショップをやりましょう。声をかけていただければ、出かけていきますよ。