タカサキきんこんかん

タカサキのキンコンカンの日々

甘夏が作る「人のつながり」、ステキな物語

  大学卒業して就職試験に落ちて2年ほどぶらぶらしていた息子がこの4月、突然淡路島に行って自然栽培の農業を始めました。その息子が5月21日(日)に中山の753カフェで開かれる大753市で野菜を販売するというのでびっくりしました。なんでわざわざ遠い淡路島くんだりから野菜を売りに来るのか、と。

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 いろいろたどっていくと、今パン屋、お惣菜屋で扱っている天草の甘夏にたどり着きました。

 今から25年前、天草で甘夏を作っている川野美和さんのみかん山について書いた文章が、友人の発行するミニコミ誌に載っていました。みかん山の匂いが漂ってくるような文章で、ぜひ会ってみたいと思い、年末に息子を連れて会いに行きました。息子はまだ八ヶ月の赤ちゃんでした。あいさつもそこそこにうんこを漏らしてしまい、困っていると

「お風呂使って洗えばいいよ」

と、川野さん。こういう事態は慣れっこという感じで、よくよく聞いてみたら、横浜旭区にある「土と愛・子どもの家保育園」を立ち上げた一人だといいます。

 「土と愛・子どもの家保育園」ができたのは今から43年前、障がいのある子どもも一緒に育てていこう、という趣旨で立ち上げ、当時はそんな保育園は皆無だったので、全国から建設資金のカンパが寄せられたといいます。そういうことにみんなでカンパするという、熱い、幸福な時代だったのだと思います。

 で、横浜に帰ってからすぐにその保育園に子どもをあずけました。保父さんがダウン症の青年でした。布団の上げ下ろしと泣いた子どもを抱っこする仕事をしていました。ちょっと太った柔らかい体で抱っこすると、不思議とみんな泣き止んでいました。ダウン症の人の優しい雰囲気が子ども達にも伝わったのだろうと思います。

 子ども達の中にも障がいのある子ども達が当たり前のように混じっていました。びっくりしたのは全盲の子どもがいて、みんなと同じように保育園の中を走り回っていました。今はステキなお嬢さんになって、2年前「ぷかぷか」を訪ねてきました。

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 手に持っているのは保育園当時、私が作ったパネル写真です。

 「土と愛・子どもの家保育園」でよかったのは子ども達に食べさせる食べ物をとても大事にしていたことです。食材はすべて自然食品のお店から仕入れていました。たとえば福神漬けは茶色でした。

 息子は小学校へ上がったとき、給食のカレーと一緒にでた福神漬けが赤い色をしていることが理解できず、「あれはなんだ」と家に帰ってから話していました。

 以来何かにつけ、保育園で食べ物を通して身についた食べ物についての感覚がずっと生きていました。

 そういった感覚があって、少し前から753カフェの畑仕事を手伝っていたようです。そのつながりで、今回淡路島に行った息子に大753市に野菜持ってこないか、と声がかかったようでした。BOIAGRIという農家グループの野菜を販売します。

bioagri.jp

 

 これが甘夏が作った「人のつながり」であり、ステキな物語です。

 甘夏を通して川野さんに出会い、川野さんを通して「土と愛・子どもの家保育園」に出会い、その保育園の食育に出会い、その食育が息子の食に関する感覚を育て、淡路島で自然栽培の農業をするようになったというわけです。

 甘夏は、何もしなければただの甘夏です。でも、思いを込めて甘夏を作り、思いを込めて食べると、こんなステキな物語を生み出すのだと思います。

 パン屋とお惣菜屋、その川野さんの甘夏を使った商品を並べています。ここからどんな物語が生まれるのか、楽しみにしています。

 

 

 「土と愛・子どもの家保育園」 ホームページ

  http://tutitoai.com