タカサキきんこんかん

タカサキのキンコンカンの日々

娘が退院      (よりそい日記−5)

 うつ病の状態がひどくなり、精神科の病院に入院した娘が退院しました。ちょうど2ヶ月です。

 病院を出るとき、年配の女性が娘の手をとって

「ももちゃん、ありがとうね、ありがとうね、元気でね、元気でね」

と何度も何度もいい、涙まで流していました。

 ああ、そういうおつきあいが病院にはあったんだと思いました。

 生きづらさを抱えながらも、孤立無援でやってきた人たちが、ようやくここに来て、その生きづらさを共有できる人たちに出会えたのだろうと思います。生きづらさを抱えた人たちだからこそ、お互いわかり合える喜び。

 病棟のエレベーターの前には5,6人の人たちが見送りに来ていました。帰りの車の中で娘は大粒の涙を流していました。

 

 2週間前、2泊3日で帰宅したときは、初日は今までにないくらい調子がよかったのですが、2日目、町田の人混みの中で買い物をして疲れ切ってしまい、調子を崩しました。家に帰ってからがずっと攻撃的な言動が続き、こんな状態で退院して大丈夫だろうかと不安になり、病院に電話しました。

 二日後に主治医、看護師、本人、両親の面談の場を設けてくれました。

 本人は泣きながら家での様子を話したようでした。両親に対して申し訳ないことをした、と。

 主治医が説明してくれました。

 本人は情報の処理がうまくできない、そのことを自分でうまく表現できない、言葉化がうまくできない、光、音、接触について、人よりもものすごく敏感、そういったことが積み重なって、いちばん甘えたい両親に向かって攻撃的な態度になってしまう、本人は病院に帰ってくると、そのことを客観的に見ることができるようになり、泣きながら反省している…

 鬱状態は確かにあるが、今話したような本人の生きづらさに丁寧に向き合うことが大切、といわれました。

 娘はそういう生きづらさをずっと抱えて生きてきたんだと、初めて気がつきました。娘に対し、気づいてあげられなくて、本当に申し訳なかったと思いました。

 昨年11月にうつ病に対して的確な診断をしてくれるという大学病院に1週間検査入院しました。そのときの検査結果を見て、娘はすごく納得することがあった、といっていたのですが、そのことの意味が私にはよくわかりませんでした。娘にしてみれば、ずっと抱えてきた生きづらさの原因がようやくわかった、ということだったのだと思います。ただいろいろ問題を掘り起こしながら、ではこの先どうしたらいいのか、というところでは、服薬の調整とデイケアサービスなどの利用、といったことぐらいしか書いてありませんでした。本人がいちばん困っていることに対して、大学病院たるものがこの程度のことしか書かないのか、とガッカリしました。重度の鬱状態は一生続く、といった希望を断ち切るようなことも書いてあって、その感覚を疑いしました。

 それに比べて、今回入院した病院は、本気で娘の困っていることに向き合い、どうしたらいいかの提案を具体的にしてくれました。

 その提案を丁寧に説明したプリントも渡されました。本人はこの2ヶ月、すごくがんばった。そのがんばりを認め、長い目で見守って欲しい。困ったことがあればすぐに病院に相談して欲しい。といったことが書いてありました。

 退院後の日々を見守ってくれる訪問看護ステーションも紹介してくれました。精神科の看護に習熟した看護師さんが時々家を訪問し、本人の様子、薬のチェック、困ったことはないか、などを主治医の指示書を元にやってくれるそうです。

 退院後、どういう毎日を送るか、本人にスケジュールを書かせていました。やりたいことの半分だけ書きましょう、やりたいことを全部書いてしまうと、自分をつぶしてしまいます、ということで書いたそうです。午前ひとつ、午後ひとつ、といったゆるいスケジュールです。みどりスポーツセンター、庭の手入れ、掃除、洗濯などが書かれ、その中に「父親の手伝い」というのがありました。どういうことか聞いてみたら、ぷかぷかに行って手伝いをする、というのです。

 これはうれしかったですね。ぷかぷかのこと、忘れずにいたんだ、って。以前から、ぷかぷかに来たら、ということは言っていたのですが、私が言うとかえって反発してだめでした。それを今回自分から「父親の手伝い」という表現で、自分の思いを表明してくれたのです。

 主治医も看護師さんも、自分から書くのを待ちましょう、とずっと前から言ってくれてました。

 

 社会に復帰するには、まだまだ時間がかかりそうです。気長によりそっていこうと思っています。

 そうそう、退院の日の午前中、娘がリクエストした映画をみんなで見たそうです。(ここの病院は、そういう時間があるようです) 映画のタイトルは『夜は短し歩けよ乙女』。森見登美彦の初期ベストセラー作品を映画化したもののようですが、さっそく本を注文しました。娘に追いつくために。